江國香織 『思いわずらうことなく愉しく生きよ』 光文社文庫 ★★★★ 三姉妹の個性が光る
新年。
「二人ともいい一年にしてね」
育子は言い、車に乗って走り去った。治子と麻子は見えなくなるまでそれを見送る。育子と育子の最新のボーイフレンドが大切にしているらしい「意志」について、
「でも意志の動機づけが恋愛でしかあり得ないことが、いつかあの子にもわかるわね」
と、話し合いながら。(P.355)
光文社の30代の女性向けのファッション、料理、ライフスタイルの情報雑誌(とサイトに書いてある)『VERY』連載小説の文庫化。長期の月刊誌連載(特に読者層の固定した)はいろいろ制約もあったろうけど、それを感じさせない完成度。
犬山家の三姉妹、長女は夫のDVに怯え、次女は仕事にもプライベートにも積極的、歳の離れた三女は恋のしかたがわからずに”西部劇の娼婦のような”生活をおくる。それぞれまったく違った個性を持ちながら、しっかりとした姉妹の絆が魅力的に描かれている。
それに対して、男性陣はまったく魅力なし。DV夫も、売れないスポーツライターも、「すべての物事に段階がある」という隣家のお坊ちゃんも。でも男として気持ちがよく描かれていて、納得できてしまう。
最後は進行形で終わるんだけど、変化の兆しもあり、江國香織らしくてとてもよかった。


