2007年11月27日

山本武利 『日本兵捕虜は何をしゃべったか』 文春新書 ★★★★ 今も変わらぬ日本人の体質?

日本兵捕虜は何をしゃべったか

著者:山本武利

出版:文芸春秋

価格:680円 (税抜)

ISBN:978-4-16-660214-8

評価 ★★★★

 日本人の捕虜には、三段階の態度変容が見られる。捕虜となった第一段階では拷問、処刑されると確信しているため、かれらの口から出る情報はでたらめである。

 ところが、一日か二日たつと、第二段階になる。かれらは拷問されるどころか、待遇や食事が良いことに驚き、感謝の気持ちをいだくようになる。アメリカ側の厚意に報いるべく、ペラペラしゃべり出す。しかもその情報は信頼できる。尋問の効果が最大となるこのときを逃してはならない。

 というのは十日から二週間もたつと、かれらは十分な食事と親切な扱いに慣れだし、尋問を面倒くさがったり、無関心となるからである。(P.38)

 太平洋戦争での日本兵捕虜の記録をアメリカ公文書館の資料を基に明らかにした力作で、戦争に限らず、日本人を理解するうえで役に立つ一冊。

 日本兵で捕虜となったものも多数いたこと、待遇や食料でころっと寝返って情報を提供したり、協力を申し出る兵士がいたことなど、日本では見聞きすることがなかった。

 なにしろ日本には日本兵捕虜の資料がない。沖縄集団自決問題にしろ、日本人は捕虜になるくらいなら「自決する」=「捕虜にならない」という「武士道」的幻想が(それが本当に武士道であるかは疑わしい)作られていたから、命が惜しくて捕虜になったものも多数いたことを知って、かえって安心した。

 翻って現代を眺めると、最近の賞味期限偽装を持ち出すまでもなく、集団の中では違法行為にも黙って従うも、その集団が危うくなるといっせいにマスコミにリーク(もちろん直接には改善しようとしない)状況とダブって見えてしまう。

 戦争に負けても日本人のメンタリティは何も変わらなかったんだね(むしろ傾向が強まった?)と笑ってしまう。微笑だか苦笑だかは分からないけど。