下川裕治 『日本を降りる若者たち』 講談社現代新書 ★★★★
「飛行機はバンコク発券の名古屋往復にしました。名古屋に着いて一泊して、翌朝、派遣会社のオフィスに出向いて。そこで登録するとだいたいすぐに仕事がみつかるんです。車関係の下請け部品工場。金を貯めるポイントは住み込みにすること。月給は二十万円くらいで、いろいろ引かれて手どりは十四、十五万円ってとこです。いつまでって目標を決めると仕事がつらくなるんで、あまり考えないことにしてるんですけど。だいだい七十万円。それが貯まったらバンコクに戻るんです。そう、名古屋から」(P.32)
社会現象はすべて関連している。もちろん、外こもりも、ワーキングプアも、年金崩壊も。
日本で短期間働いて、残りはタイなど物価が安いところで、何もせず生きている-暮らしているとはいえない-姿を、アジア滞在を啓蒙した著者によるレポート。彼らはなぜ帰って来れなくなってしまったのか。
日本で生活費を稼ぎ、日本人で集まり、ネットカフェで日本のサイトを見ている生活は、日本と切り離せない実態を際立たせているだけで、国際、もしくはその社会の構成員となるというグローバルやボーダレスで語られる生活とはまるで違う。
この外こもり問題を若い世代だけだと考えてしまいがちだけど(ワーキングプア問題もね)、年金が崩壊し、ただ死ぬまで生きるために生活費の安いタイに移住した老人の姿には、思っていたより日本の病は進行してると知って、心底ぞっとした。
これは、早急に解決しなくてはいけない日本の国内問題なんだ。
安易な解決策を示すわけでもなく、学術的でもなく(統計をとろうとか、分類しようとかしなかったという意味でね)、外こもり像をインタビューによって明らかにした良書。
社会現象がすべて関連しているなら、良い影響も連鎖してくれると信じるしかない。


