2008年09月02日

洋泉社ムック編集部 『アキバ通り魔事件をどう読むか!?』 洋泉社MOOK ★★★★

アキバ通り魔事件をどう読むか!?

著者 洋泉社ムック編集部編

出版 洋泉社

価格 800円 (税抜)

ISBN 978-4-86248-315-7

評価 ★★★★

多くの論評から自分のポジションを見極める

なぜ秋葉原が犯行の舞台に選ばれたのか-森川嘉一郎(P.104)

 もとより私に注文されたのは「アキバ文化の研究者とおぼしき立場からの、それらしい見解」であって、報道発表の復唱などではない。だが、この事件についてなされている数多くの「識者」の発言と同じように、そうした「見解」によって露わにされるのは、事件の実像ではなく、発言者の政治的立場である。

 アキバ通り魔事件についての論評集。赤木智弘、東浩紀、雨宮処凛、河合幹雄、三浦展、宮台真司など著者は幅広い。著者たちは、ときに反対の解釈をし、ときに反対の主張をしているけど、これだけ多くの批評が成立してしまうところに、この事件の社会性が現れているように思う。

 不安定雇用に不安を感じ、自分のブサイクさに落ち込む、そんな犯人の内情のかけらでも自分の中にあることを、多くの人は否定できない。それは、宮崎勤や酒鬼薔薇聖斗に対してはなかったものだと思う。

 この事件は特殊で、すぐに同様の事件が連発するとは思えないし、皮肉にもこの事件によって、事件の遠因のひとつと目される日雇い派遣(犯人は日雇いではなかったけど)が禁止されそうだけど、これからは加藤智大につながる要素がなくなることを意味しない。

 多くの著者の意見の関係を整理して、自分がどのポジションから、この事件に接して、消化していくのかよく考えたい。