2009年03月15日

小川糸 『食堂かたつむり』 ポプラ社 ★★★★★ 圧倒的な生命感

食堂かたつむり

著者:小川糸

出版:ポプラ社

価格:1,300円(税抜)

ISBN:978-4-591-10063-9

評価 ★★★★

(P.15)

私は声を喪失した。

少し驚いたけれど、哀しくはなかった。痛くも痒くも苦しくもない。ただ、その分、体が軽くなった気がした。それにもう誰とも話したくない、と思っていたからちょうどいい。

私はじっと、自分だけに聞こえる心の声に耳を澄ましてみようと思う。そうすべきなのだ、きっと。

ある日部屋に帰ると、インド人の彼氏と共にテレビも洗濯機も冷蔵庫もなくなって、ショックから声も失ってしまった女性が、田舎でスナックをやっている母の元で食堂かたつむりを開く。そしてお客や近所、料理との関わりから、声を取り戻す話。

これだけ書いてしまうと、瀬尾まいこの『天国はまだ遠く』などと同じくありふれた筋書きなんだけど、料理と生命の描写が素晴らしい。

実はちょっと前にこの本を読んだんだけど、著者にこれ以上の話を書く意欲があるのか分からなくて、感想を書けずにいた。でも先月、『喋々喃々』が発行されたので一安心。